「音楽業界は衰退している。オワコンだ。」そう言う人も多い昨今ですが、実際のところどうなのでしょうか。ここでは、なぜ音楽業界が衰退したと言われるのか、その理由と現状を整理し、今後どう行動するべきなのかをアーティスト活動する人の立場から考えていきます。
こんにちは。管理人のちん兄です。
今回は音楽業界全体にまつわるお話です。
「音楽業界は衰退している」
「音楽業界は終わった」「オワコンだ」
もう数年前から、多くのジャーナリストや評論家、さらには一般人からも言われている言葉。
大勢がそう言うものだから、あたかも本当に業界がお先真っ暗のように感じてしまう世の中になってしまいました。
しかし、果たしてそれって本当なんでしょうか?
音楽業界はもうダメなんでしょうか?
今回は、音楽業界について、「なぜ衰退したと言われるのか」「実際のところ、今どうなのか」「これから業界で必要なのは何か」
これらを、アーティスト活動をする人の立場から考え、予想していきます。
なぜオワコンと言われているのか
まず、音楽業界に対し、やれ衰退した、やれオワコンだ、そういった声がなぜ生まれたかを紐解きましょう。
時代の移り変わり
音楽の始まりは、大昔です。
まだ衣食住全てが今と違う、本当に本当に気の遠くなるような大昔から、人々は音楽を続けています。
そこにあったもので音を奏でていたような時代から、これまた長い年月をかけながら、人々は楽器というものを次々と発明していきます。
そしていつしか、アーティストという職が生まれることになります。
アーティストは、音楽を演奏し続けました。
まだ、まともな録音などできず、人前で演奏することがアーティスト活動。
時代は急成長し、技術が発展すると、機械を使った録音技術が生まれます。
この録音技術が、音楽の業界の礎となったと言ってもいいでしょう。それぐらい大きなことでした。
音源を録音し、それを再生できる媒体に封じ込め、人々に提供する。現在の音楽業界でも根強い考え方となっている「音源を売る」というビジネスが始まります。
その後も成長は続き、その音源を大量生産して売ったり、ライブやコンサートに高い価値をつけたり、グッズを作ってみたり、有料ファンクラブをやってみたり、テレビに出たり、凄まじいまでに業界の手は広がっていきます。
国内でいうと、20〜30年前くらいにCD全盛期となります。(ピークは1998年と言われています)
人気のあるアーティストであれば、一枚CDを発売するとたちまちそれがミリオンヒットとなるような、CDバカ売れ時代。
ライブやコンサート、テレビ出演の売り上げもかなりのものでしたが、何よりもCDの売り上げがハンパじゃない時代でした。
しかし、そこから音源の売り上げはどんどん落ちていきます。
原因はいくつも挙げられるのですが、中でも有力な考えが、レンタル・中古市場の拡大と違法アップロードの蔓延です。
レンタル・中古市場の拡大により、人々は「聞くだけなら安く抑えられてお得」と感じて新品を購入する機会が減りました。
さらには違法アップロードが蔓延し、ネットで聞けちゃうからCDはいらないと考えるようになります。
その後、さらにCDが売れなくなる追い討ち。ダウンロードの時代到来です。
1曲ごとに安価でダウンロードできてしまうから、人々は本当に好きなアーティストでもない限りCDのようなパッケージにこだわらなくなりました。
そして定額配信。
いよいよCDは売れず、ほとんどの人がネットで音楽を楽しめるようになったのです。しかも買うよりも、レンタルするよりも、はるかに安く。
長くなりましたが、これが音楽業界を見たときの時代の移り変わりです。
世界規模で見ても、上図のように変わってきている。
こうなった背景
ここまで、特に後半部分は「CDが売れなくなった話」をしてきました。
理由もいろいろと書きましたが、まとめてしまうと、
人々は同じものを手に入れるなら、より気軽に入手でき、安いほうがいいから
ですよね。
そしてそれを叶えられるように技術が発展してきたんです。複製の技術が。
レコードよりもカセット。カセットよりもCD。そうやって媒体を安くて便利なものにしてきたのと同じように、
CDの中身をデータとしてパソコンやケータイに入れる。CD販売やレンタルじゃなくてもデータ販売にすればいい。データ販売よりも定額配信という形にしよう。
そのほうが安いし便利だ。そういう流れなんです。
データとして複製可能なものは無料に向かうものです。
理由は生産コストが低く抑えられるから。
もちろん録音するときの費用は媒体がどうであれ同じだけかかりますが、CDという形あるもの1枚1枚の原価よりデータを売ったり配信する方が圧倒的にコストが低く済みます。
映画や書籍なんかも同じ理由で、配信や電子版が生まれたことにより、低価格化・無料化が進んでいますよね。
こうなることは、言ってしまえば分かりきっていたことなんです。
また、これは少し違う角度のお話ですが、90年代なんかは人々の聴く音楽は集中していました。
どういうことかというと、みんなに人気の音楽を聞きたいから聞く風潮です。
もちろん今でもその風潮はありますよ?人間の、特に日本人の文化がそうさせるのです。
ただ90年代は、人々の情報収集は主にテレビ、ラジオ、雑誌、新聞でした。大多数の人間はそれを見て読んで聞いて、基本的にそこに露出しているアーティストしか知らなかったのです。
一方、今ではネットという膨大な情報の中から、好きなアーティストを探せるようになりました。テレビ、ラジオ、雑誌、新聞に露出のないアーティストも知ることができるのです。
こうなると、90年代のように一部のアーティストに集中していた人気が、分散されます。
結果的に、人気のあったアーティストのCD売り上げが下がるのは当然といえば当然です。
個人的には、人々が流行に振り回されすぎず、それぞれ聞くアーティストの選択肢が増えるというのはいい現象だと思いますけどね。
CD売り上げに限らずに言えば、ネットのおかげでどんなミュージシャンにもチャンスがあるってことですし。
オワコンだと言う人、それに対する僕の意見
さて、それでは本題に戻ります。
なぜオワコンと言われるのか?
それは、CDの売り上げが低下しているからです。
逆にいうと、オワコンだと発言する人の多くは、「CDが売れなくなったから」という理由だけで音楽業界に未来は無いと言ってるわけです。
決して全員がそうではありませんが、これだけの理由で言っている人が多いです。
どうでしょう?みなさんはその理由だけで音楽業界はオワコンだと思いますか?
僕は全く思いませんね。
そもそも、「音楽業界=音源売り上げ」という考え自体、おかしくありませんか?
アーティスト活動にはいろいろあるんですよ。ぶっちゃけ音源以外にもいろんなマネタイズがありますし。
それに人々は価値あるものに対してお金や時間を使っているわけで。
アーティストの価値が音源だけというのは少々乱暴すぎるかな、というのが僕の意見です。
CDの売り上げばかり気にして音楽業界がオワコンだという人は、古い考え方に固執しているとも言えます。
レコード大賞とかありますけど、配信が広く普及している時代に、いつまでCD売り上げ実績をもとにした表彰なんてやってるんだろう・・・と感じてしまいます。
まあ、少し言いすぎたかもしれませんが、日本における音楽賞への違和感と、オワコンなのはCDの売り上げばかり気にする考え方なんじゃないか、ってのが僕の思うところ。
アーティスト目線で、この現状をどう考えるべきか
では、アーティストの目線でこの現状をどのように考えるべきか。
結論から言います。
CDが売れなくても、今後の音楽業界を悲観することはありません。
全くもって大丈夫です。
気に留めておく程度にして、やれることをやりましょう。悲観はしなくて平気。
CDが売れずに困るのは誰か
CDが売れなくなったら、一番困るのは誰でしょう?
CDが売れると、アーティストには印税が入ります。
そして、ダウンロードや配信も同様に印税が入ります。
この印税にどのような差があるか、というお話は長くなるので今度します(笑)
ただ、一つ言えるのは配信での印税は、世界のメジャーレーベルいわく「CD全盛期に及ばずとも現在のCD売り上げよりかは全然良くなる」そうです。
ちなみにアメリカでは、ビルボードチャート上位50組のApple Music参入率が100%という結果があります。少なくともアメリカのトップアーティスト達は定額配信に対して抵抗は無いという見方ができます。
それに対し、日本は世界と比べるとまだまだ配信への移行が遅れています。その証拠に世界で最もCDが売れている国は日本です。そして、配信に参入していない国内有名アーティストがゴロゴロいます。
これは日本のレコード会社が必死の抵抗をしているからです。
そう、CDが売れなくて一番困るのはレコード会社です。
レコード会社としては、CD売り上げが大きな利益となっています。アーティストとの契約にもよりますが、ざっくり一般的にCD売り上げ金の分配のうち50%近くがレコード会社に入ったりします。
ダウンロード販売だとiTunesの取り分がかなり大きくなってくるため、レコード会社は何としてもCDを売りたいのです。
最低な言い方ですが、アーティストからしたら別にそれほど困る要素では無いんです。
時代に合わせてやり方を変えても、結果的に自分たちの音楽がより多くの人に聞いてもらえれば良いですよね。
ライブ収益はどうか
CDが売れなくて困るのは、レコード会社の都合でした。
ではアーティストはどう動いていくべきか。音源ビジネスの他に挙げられる活動として、やはり「ライブ」がまず出てくると思います。
業界全体のライブ収益は、かなり調子がいいですよ。
ライブの売上高は、1996年の時点での719億円から、2014年には2749億円と右肩上がりです。グラフにはありませんが2017年には3324億円にまで上がっています。
つまり、ライブ産業自体はどんどん伸びているということです。
そしてさらに言ってしまうと、業界全体の売り上げで考えたときに、黄金期とも言われる1990年代と現在、ほぼ変わりないという現実です。
これは公表されたデータに基づいた、事実です。
ライブだけでなく音楽ビジネス全体の話にまで飛んでしまいましたが、結論として、音楽業界は特に衰退していません。
今後アーティストはどんな行動を取るべきか
はい。気になる部分ですよね。
ただ、簡単な答えは出せません。
なぜなら、音楽ビジネスは衰退していないのですから。
変革を起こしていく、時代を先読みする
しかし、これまでのやり方にとらわれ、固執し、変革していけないアーティストは、今後生き残れないと僕は考えます。
ここまでの話から、CDに固執して売れない売れないと騒いでいるようじゃダメだということは明白です。
同じことで、結局、時代に合わせて変化をしていける人が強いんです。時代を先読みできるともっと強い。
何かしら変革を招いて、音楽業界の時代を動かす一石を投じることができれば最強です。
別業界から学ぶ
その変革のヒントとして、他の業界のビジネスモデルがあります。
真新しいものではありませんが、例えば、映画館。
映画を見るとき、チケット料金を払いますよね?
このチケット料金、実は大して儲けにはなっていません。
じゃあどこで儲けを出しているのかというと、フードやドリンクです。
「つまりアーティストもライブの時に飲食店をやれってこと?」と聞かれそうですが、ぶっちゃけ超アリだとは思います(笑)
ただ、僕がこの例で言いたいのは、映画というメインコンテンツだけに絞らず、他でもマネタイズしていく必要がある、ということです。
そしてそれは、多くの人が頻繁に求める、需要の高い商品であると良いです。
ですので、アーティストにおいても、音楽というメインコンテンツ以外のところで収益化に繋げられると活動の強みとなるでしょう。
そのヒントとして、別業界の研究は非常に効果的です。
レーベルに所属せず「個人」で動いていく
ネットで自分たちをマーケティングできる時代です。
レーベルに所属する最大のメリットともいえた、広告宣伝の部分。
確かにお金をかけて盛大にプロモーションしてくれるのは魅力的です。
しかもレーベルがやってくれるから自分は音楽と向き合う時間が増えます。
ただ、個人でもある程度の労力で、ネットという、テレビやラジオと同等かそれ以上のフィールドで宣伝ができるんです。お金もそれほどかけずに。
さらに、レーベルに所属することで、さまざまな制限をされます。
ライブの頻度だとか、グッズのアイデアだとか、活動全てが自分の好き勝手にはできません。自由度がかなり低くなります。
それに先述した通り、国内レーベルは基本的にまだCDを売りたがってるんです。ですのでそこに注力させられることが目に見えています。
僕の考えは、今後も変化し続けるであろう音楽の世界で、固執したやり方になってしまわないよう、レーベルに頼らず自分で力をつけていくことが一番だと感じます。
自主レーベルを立ち上げるアーティストが多いのは、こう言った流れを気にしてのことなのではないでしょうか。
音楽業界のまとめ
以上、音楽業界は本当にオワコンなのか、アーティストは今後どう行動すべきかをお話ししました。
覚えておいて欲しいのは、
音楽業界は終わってなんかいない、CD売りたいという考えが終わってるだけ。
ってこと。
むしろここからな気もします。
いずれはCDが無くなり完全データ化・配信化するでしょう。今はその変革期真っ只中。
ここから音楽業界がどんな発展をしていくのか?楽しみですね。
そしてこれをお読みいただいたあなたが、この変革期の中で時代の流れをつかみ、成功することを願っています!