歪んだ音を出すためにオーバードライブを使用する方は大勢いますが、その歪みの質は本当に多種多様ですよね。それが歪みエフェクター選びの面白さでもあり難しさでもあります。
中には「今持っているオーバードライブだと、歪み方はカッコ良いけど、ローコードを弾くと音が潰れてしまってコード感が出にくい…」「音抜けが悪い…」と悩まれている方もいるでしょう。ちゃんと歪んで、音が抜けて、なおかつコードが潰れすぎず一音一音が綺麗に鳴るオーバードライブがあったら嬉しいですよね。
実は、結構あるんです。
今回はさまざまな種類があるオーバードライブの中でも、「コードの分離感」「綺麗な歪み」「音抜け」を求める方にぴったりのエフェクターをご紹介します。
「コードを聴かせる歪みサウンドを手に入れたい」
「音抜けとバンドサウンドの溶け込みを両立したい」
「ワンランク上の歪みサウンドに興味がある」
というギタリストの方はぜひ参考にしていただけたらと思います!
コードの分離感ってそもそも何?
まず、コードの分離感とは何かを説明していきます。音に対して「分離感」という表現は曖昧で少し分かりづらいという方もいるでしょう。
コードの分離感とは、簡単に言えばコードの一音一音がどれだけ明瞭に聞こえるかを指している言葉と考えています。
「解像度」ともいえますね。
つまり、コードの分離感が良いオーバードライブペダルとは、ある程度歪んでいてもそれぞれの弦の音が綺麗に聞こえるエフェクターということです。
このようなオーバードライブペダルは「コードをしっかりと聞かせたい」という場合はもちろん重宝しますし、また一音一音がクリアということはそのぶん音抜け感を持ちながらもバンド全体のアンサンブルに溶け込みやすいため、非常に扱いやすいのが特徴です。
ちなみに、一般的にオーバードライブなどでギターの音を歪ませると、音の波形はギュッと潰れます。潰れることで歪みが生まれるのでこれは仕方のないことなのですが、その潰れ方には特徴があり、極端なケースだと原音がわからないような潰れ方だったりクリーンからクランチ程度の潰れ方などさまざまです。
そんな中で、ある程度の歪みの迫力がありつつしかもクリアなサウンド、そんな一見矛盾とも思える2つが共存する音色は、コードをしっかり聴かせたいギタリストにとって「最高」といわざるを得ません。
コードの分離感が素晴らしいオーバードライブをピックアップ
それでは、コードの分離感が最高に心地良いオーバードライブを紹介します!
僕自身、コードを聴かせるオーバードライブを探し求めていたことがあり、オーバードライブはあれこれ試してきました。その経験から、今回はおすすめしたい機種を5つに厳選しています。
また、紹介とともに「分離感」「歪みの幅」「扱いやすさ」「総合評価」を僕個人の見解で評価していますので、よかったらあわせて参考にしてください。
BOSS / OD-1X
エフェクター界でも最も有名なメーカーのひとつ、BOSSから出ているオーバードライブ。
実は僕も愛用しています。
BOSSのエフェクターは直感的に使いやすいものが多く、オーバードライブペダルは何種類もありますが、このOD-1Xは特に綺麗な歪み方をします。
かといって歪みのレベルがおとなしいというわけではなく、クリーンやクランチサウンドはもちろんディストーションに近い領域までカバーしており、音作りの幅はかなり広め。
それでいてコードの分離感が優秀なので、弾いても聴いても心地良い。
ただ、レトロな音作りは難しいかもしれません。どちらかというとちょっぴり現代的な音です。
というのも、OD-1Xは音の輪郭がはっきりしているからです。しかしそれによる音抜け感とバンドアンサンブルの溶け込み感は見事と言わざるをえません。とにかく他の楽器の邪魔をしない範囲であらゆる帯域を持ち上げ、しかもギターの美味しい部分はちゃんと前に出してくれる、そんなイメージです。
また、EQのコントロールもかなり効きがよく、細かなセッティングが可能です。
メインの歪みとして使うこともできますし、ブースターとして使うのにもおすすめ。扱いやすさはトップクラスではないでしょうか。
分離感:
歪みの幅:
扱いやすさ:
総合評価:
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VEMURAM / Jan Ray
近年かなり人気の高い「Jan Ray」。
これ、人気なだけあってすごいです。
分類としては「ローゲインオーバードライブ」となっていて、確かにゴリゴリの歪みは出しづらいのですが、ちゃんとドライブ感は持っているので「そこそこの歪みは欲しい」という方でも満足できるかと思います。
音質はふくよかで原音を大切にしたサウンドです。あくまでもギター本来のポテンシャルを軸に、豊かな倍音を足してくれるような感覚ですね。
EQコントロールがめちゃくちゃよく効くのも魅力的。
また、エフェクター内部にもコントロールノブがついていて、倍音の出し具合を調節可能です。出せば出すほど煌びやかになるのですが、出しすぎるとギラつきが気になる場合もあるのでお好みのセッティングを見つけてください。
正直、非の打ちどころのない、優秀すぎるオーバードライブです。
強いて気になるポイントを挙げるなら、倍音多めのセッティングをしていると、コーラスやピッチシフターなどの別のエフェクトに干渉してしまう可能性があるくらいです。とはいえ、干渉しすぎない程度に倍音をコントロールしてやれば良いだけの話なので、僕個人としてはあまり問題に感じてはいません。
ベタ褒めしていますが、それほどまでに完成度の高いオーバードライブということです。ぜひ使ってみてほしいです。
分離感:
歪みの幅:
扱いやすさ:
総合評価:
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Xotic / SL Drive
コンパクトな筐体が特徴的な、XoticのSL Drive。
コードの分離感は優秀。そして歪みの質としてはややザクザクとした印象ですね。ストラトやテレキャスといったシングルコイルのギターだと特に刻みのアタック感が気持ち良いです。
ハムバッカーだとギャリっとした感触と粘りが得られて、芯のある音がこれまた気持ち良い。
結構アンプライクな質感だと思っていて、マーシャルっぽさがあります。またディストーション並みに歪ませることも可能なので、ジャンルを問わず使えるでしょう。
しかも歪みを強くしても、あまりノイズが気になりません。歪み系エフェクターでありがちな「ザー」という耳障りな音がしないのは、個人的にそれだけで高ポイントです。
分離感:
歪みの幅:
扱いやすさ:
総合評価:
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Leqtique / Redemptionist
Leqtique(レクティーク)からRedemptionistの紹介です。鮮やかな見た目が特徴的で、なんとなくエフェクターボードに組み込みたくなります。
ただ見た目だけではなく、音質も素晴らしいです!
歪ませていても全体的にスッキリとした音質で、それが分離感に繋がっています。雑味がなく、音抜けはすごく良いです。単音弾きギターソロなんかは最高に気持ち良いでしょう。
逆にいえば太さや粘りのある歪みサウンドを求める方にはあまり向いていないかもしれません。先ほど挙げたBOSSのOD-1Xよりもさらに現代寄りのサウンドだと思います。
歪み加減はオーバードライブとしてもディストーションとしても使用可能なレベルです。そういう意味では汎用性の高いエフェクターですね。
分離感:
歪みの幅:
扱いやすさ:
総合評価:
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JHS pedals / Morning Glory
神々しいゴールドの筐体がおしゃれでカッコ良い、JHS pedalsのMorning Glory。
ゲイン幅は今回紹介するエフェクターの中でも狭めなのですが、そのぶん透明感のあるキラキラしたキャラクターとピッキングの強弱に対するレスポンスの良さがとても魅力的です。コードの分離感は言うまでもなく優秀。
「高域重視のエフェクターなのかな?」と思う反面、キンキンとした耳に痛い部分はしっかりと抑えられています。ここまで聴いていて気持ちの良いハイ成分も珍しいのではないでしょうか。
個性的なサウンドですし、ポップスや軽めのロック程度までだったらメインのオーバードライブとして活躍しそうです。また、ブースターとしてもかなり使えるので、他の歪みエフェクターと組み合わせるのも効果的です。
分離感:
歪みの幅:
扱いやすさ:
総合評価:
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コードの分離感が良いとどんなメリットがある?
ここまで「コードの分離感の良いオーバードライブ」を紹介してきましたが、分離感があると一体どんなメリットがあるのでしょうか?
僕の持論も含め、考えうるメリットは以下の通り。
- 聴く側に対してコードのニュアンスがちゃんと伝わる(音階が明確に伝わる)
- 音抜けが良くなる
- バンドアンサンブルに馴染む
ひとつずつ詳しく解説します。
聴く側に対してコードのニュアンスがちゃんと伝わる
当然のことではありますが、コードの一音一音が明確に聴こえるということは、コードのニュアンスがちゃんと伝わると言い換えられます。
たとえばマイナーコードとマイナーセブンスコード使い分けるなど、絶妙なニュアンスの違いを多用する場合、歪んだ音だとどうしても聴き手にその違いが伝わりにくい側面があります。
しかし、コードの分離感が良いオーバードライブペダルを使うことによって、そういったニュアンスをしっかり届けることが可能になります。
「歪んだ音にしたいけど、複雑なニュアンスのコード感もちゃんと伝えたい」という場合には、今回ご紹介したエフェクターを使ってみると満足いく音作りができるかもしれません。
音抜けが良くなる
音が明瞭に届けられるということは、ゲイン成分によって本来届けたい音がかき消されることが少なくなるため、音抜けの向上につながりやすいです。
音抜けに悩んでいるときって、いろいろと迷走してしまいがちですよね。「音抜けが悪いから単純にボリュームを上げてみたら、周りのメンバーからは嫌な顔された」なんて経験がある方も多いのでは?
他にもパワーを出そうとギター本体やピックアップを変えてみたり、アンプを変えてみたり、シールドを変えたり。あとはEQでどうにかしようと試行錯誤してもなかなか答えが出なかったり。
もちろん、中にはそれで解決したという人もいると思いますが、「原音がちゃんと前に出てきてくれない」ことが原因のケースだとそのやり方だとまず解決は望めません。なぜならゲインが原音の邪魔をしてしまっているのですから。
その場合は、ゲインを下げるか、歪んでいても原音が聞こえやすい音質にするしか解決策はありません。
音抜けが悪いと感じている方、バンドメンバーからそう言われた方は、一度検討してみましょう。
バンドアンサンブルに馴染む
コードの分離感が良いと、バンドアンサンブルに溶け込みやすくもなります。
先ほどの「音抜けが良くなる」と対極なのでは?と感じる方もいると思いますが、そうとも限らないのが音作りの難しいところです。
仮に、無理にボリュームを上げて音抜けを良くしていた場合、やはりバンドメンバーにもお客さんにも、「ギターうるさすぎ」と思われてしまいます。歌や他の演奏隊の音が聞き取りづらくなってしまうのです。
一方で分離感を良くして音抜けを改善する場合、ギターの音がはっきり聴こえるのにもかかわらず、周りの演奏の邪魔をすることもないので、結果的にバンド全体のアンサンブルとしてバランスが良くなります。
分離感を重視したオーバードライブでワンランク上のサウンドを!
コードの分離感の良いオーバードライブについて、その特徴やメリット、おすすめの機種のご紹介をしてきましたが、いかがだったでしょうか。
「歪んでいてもコードのニュアンスをちゃんと伝えたい」
「音抜けを良くしたい」
という方はぜひ、参考にしていただけると幸いです。
今回紹介したオーバードライブ一覧
BOSS / OD-1X
分離感:
歪みの幅:
扱いやすさ:
総合評価:
VEMURAM / Jan Ray
分離感:
歪みの幅:
扱いやすさ:
総合評価:
Xotic / SL Drive
分離感:
歪みの幅:
扱いやすさ:
総合評価:
Leqtique / Redemptionist
分離感:
歪みの幅:
扱いやすさ:
総合評価:
JHS pedals / Morning Glory
分離感:
歪みの幅:
扱いやすさ:
総合評価:
音作りはギタリストにとって、終わりのない探求のようなものだと思っています。
その中でどれだけ納得のいく音作りに近づけるかが、永遠のテーマといえるでしょう。
この記事があなたにとってそのヒントになれば、嬉しい限りです。